Epstein-Barrウイルス(EBV)初期遺伝子BZLF1遺伝子にコードされるZタンパクは、宿主細胞内に潜伏感染したEBVを複製サイクルに誘導することができる。このZタンパクは細胞性転写調節因子であるAP-1ファミリーとりわけFosタンパクとの間に、そのアミノ酸配列において高い相同性を有するが、AP-1ファミリーに特徴的なロイシンジッパー構造を持たない。本研究ではまず、Zタンパクの構造と機能をFosタンパクと比較検討するために、ZタンパクのDNA結合配列を含むN末端198アミノ酸とFosタンパクのロイシンジッパー構造を含むC末端227アミノ酸を結合させたZFos融合タンパク発現プラスミドを作製し、BZLF1遺伝子あるいは、c-jun、c-fos遺伝子を同時に発現させることにより活性化されるウイルスBMRF1プロモーターとc-jun、c-fos遺伝子の同時発現によってのみ発現活性化され、BZLF1遺伝子発現では活性化されないコラゲナーゼプロモーターをレポータープラスミドとしてその転写活性化能を検討した。ZFosタンパクはFosタンパクと異なりBMRF1プロモーターの活性化には外因性のJunタンパクを必要としなかったが、コラゲナーゼプロモーターの活性化には外因性のJunタンパクの発現が必須であった。また、ZタンパクとFosタンパクはDNA結合領域よりN末端側ではアミノ酸配列に高い相同性を有し、Fosタンパクのこの領域はZタンパクの対応する領域で完全に置換可能であるばかりでなく、同部をZタンパクの対応する領域で置換した融合タンパクは、Fosタンパクと異なり外因性Junタンパクの非存在下の転写を活性化するという新しい機能を獲得することが判明した。
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