研究概要 |
(目的)訓練による平衡機能向上のメカニズムはまだ不明確な点が多い。今年度は視性訓練による平衡機能向上(response increase現象、福田ら、1957)の機序を機能面と物質面から研究した。(方法)1.視性訓練方法:装置はOhm型回転ドラムを用い、その中央に有色家兎を置き、30deg/sの等角速度刺激を時計回りか反時計回りの方向のいずれかに1日15分間、連日3週間与えた。2.訓練効果判定法(1)測定方法:1,5,10,20,30,45deg/sのstep刺激を100秒間与え、その後消灯し、視運動性眼振を記録した。(2)判定項目:1)総眼振数、2)緩徐増加成分の加速度、3)定常状態に達するまでの時間、4)定常状態の平均緩徐相速度、5)視運動性後眼振の持続時間、6)視運動性後眼振の減速度(3)視運動性眼振は覚醒度に影響をうけることから、覚醒度の影響を上述の判定項目について検討した。(4)訓練終了後、免疫組織化学的に脳内物質(c-fos,GABA,glutamate,CRF,tyrosine hydroxylaseなど)の変化を検討した。(結果)1.覚醒度の影響:緩徐増加成分の加速度、定常状態に達するまでの時間は影響を認めたが、定常状態の平均緩徐相速度は覚醒度の影響をうけることは少なかった。2.訓練効果:視性訓練によって緩徐増加成分の加速度の上昇、定常状態の平均緩徐相速度の上昇を認めた。定常状態に達するまでの時間は変化が少なかった。視運動性後眼振の持続時間は有意な変化はなかったが、減速度は増加した。3.訓練後の脳内物質の変化については対照群で、c-fos,GABA,gulutamate,CRF,tyrosine hydroxylaseの局在を確認し、訓練群については現在検討中である。(まとめ)緩徐増加成分と視運動性後眼振はvelocity storaga mechanismに関係しているといわれているが、そのgeneratorなどはわかっていない。今回の結果から、velocity storage mechanismは訓練によって影響をうけることがわかった。
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