研究概要 |
目的:前年度までに視性訓練により、等速度刺激に対する定常状態の平均緩除相速度の上昇が有意にみられた成果を得た。この視性平衡機能向上に関与する物質につき検討した。 方法:1)視性平衡機能向上が見られた有色家兎20羽を5群(各4羽)に分けた。視性訓練終了時にNMDA受容体の拮抗剤であるMK-801を0.05,0.1,0.25,1.0mg/kgの4つの濃度に分けそれぞれ4つの群に投与し、視運動性眼振に与える影響を生理食塩水を投与したコントロール群と比較検討した。評価には10°/sと30°/sの等速度刺激に対する定常状態の最大ゲイン、等角加速度刺激(1°/s^2)における総眼振数を用いた。2)MK-801の作用機序を明らかにするために、回転後眼振(60°/sの等速度回転、40秒刺激)、Whishawの方法に準じたlocomotor activityおよび自発活動、Robimson′s scaleを用いた覚醒状態、海馬および大脳皮質の脳波に与える影響も検討した。 結果:1)MK-801投与1時間後、客量依存性に定常状態の最大ゲインと総眼振数は減少し、ほぼ48時間後には投与前のレベルまで回復した。2)MK-801投与で回転後眼振の時定数は0.1mg/kg以下の量では抑制されなかった。自発活動性は回転後眼振の抑制がみられなかった0.1mg/kg以下の投与量では十分維持されていた。同時に測定した覚醒状態も生理食塩水を投与したコントロール群と有意差を認めなかった。海馬および大脳皮質脳波には影響はみられなかった。 結論:視性平衡機能向上には前庭眼運動系とくに速度蓄積機構を介さない、大脳皮質内視覚経路においてNMDA受容体が関与することが示された。
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