研究概要 |
(1)前年度までに有色家兎を用い、視性訓練による視性平衡機能向上とその神経機構を検討した。平成6年度はそれに関与する物質面からの検討を行った。 方法:有色家兎に、視性訓練として30°/secの等速度刺激を1日15分間、反時計回りに連日12日間与えた。12日目の測定が終了した時点で、NMDA受容体の拮抗剤であるMK-801を0.05,0.1,0.25,1.0mg/kgの4つの濃度にして、それぞれ4群(各群4羽)に分けて投与し、生食水を投与したコントロール群と比較した。検討項目は10°/secと30°/secの等速度刺激に対する視運動性眼振の定常状態の緩徐相速度の最大ゲイン、1°/sec^2の等加速度刺激による総眼振数である。同時に前庭系への影響を観察するために回転後眼振、また、MK-801は海馬に結合しやすいので海馬脳波を検査した。 結果:(1)MK-801の投与1時間後、容量依存性に定常状態の最大ゲインおよび総眼振度は減少し、約48時間後にはすべての家兎において投与前のレベルまで回腹した。(2)回転後眼振の時定数は、0.1mg/kg以下の投与量では抑制されなかった。また、海馬脳波には影響はみられなかった。 結論:視性訓練による視性平衡機能向上には大脳皮質内視覚経路においてNMDA受容体が関与していることが示唆された。 (2)回転訓練による前庭系平衡機能向上につき検討した。 方法:有色家兎に、100°/secの等速度刺激を40秒間反時計回り方向に与え、完全暗所下にて回転後眼振を記録し、その時定数と最大ゲインを測定した。この刺激を20回与え、15分間明所に放置した後、同様の刺激を5回与えた。刺激開始30分前に生食水(4羽)とメタンフェタミン(MAP,4羽)を投与した群を比較検討した。 結果:両群ともresponse declineを認めた。15分間放置後、MAP群の時定数は放置前の時定数が維持されていたが、ゲインは維持されなかった。MAPは回転後眼振の時定数の低減の保持に促進的に作用すると考えられた。
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