Decay-Accelerating-Factor(以下DAF)は、1984年、Medofらによって発見された赤血球膜などに存在する補体系制御蛋白質である。臨床的には発作性夜間血色素尿症においてDAFの欠損が報告されている。我々は以前内リンパ中に補体が存在することをすでに報告している。この自己の補体より内耳の諸器官を保護することは非常に重要である。そこで内耳にDAFが存在すると考え、実験を行い以下の結果を得た。1・血管条において、辺縁細胞を中心に中間細胞にかけてDAFが存在していたが、基底細胞やラセン靭帯では認められなかった。2・コルチ器、cla-udius細胞、基底板、骨ラセン板、蓋膜、ラセン板縁、ライスネル膜においてDAFはなかった。3・か牛神経、か牛神経節細胞においても在存しなかった。4・内リンパ嚢上皮細胞においてDAFを認めた。我々は補体の活性成分であるアナフィラトキシンを使い、内耳とくに血管条を破壊し形態学的に検討し報告している。アナフィラトキシンの血条での傷害部位は主に辺縁細胞から中間細胞と考えられる。そこで、アナフィラトキシンにて内耳傷害を及ぼした動物においてのDAFの局在について、形態学的に検討した。正常モルモツトにおいて上述したごとく血管条と内リンパ嚢上皮細胞にてDAFが存在していたが、アナフィラトキシン処理モルモツトにおいて、明らかに同じ部位にてDAFの量が減少していた。今後、さらに形態的あるいは電気生理学的検討を加え内耳疾患の病態を明らかにしたいと考える。
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