研究概要 |
上顎洞癌の予後と上皮成長因子受容体(EGFR)との関係を、免疫組織化学的手法を用いて検討した。 対象は1981年〜1989年に大阪回生病院と香川医科大学で治療した上顎洞扁平上皮癌新鮮例のうち、T_2、T_3の28症例である。この28症例を三者併用療法(放射線療法、化学療法、手術)を施行した後、局所に再発した局所再発群10例と非再発群に18例分類した。 方法は、ホルマリン固定パラフィン包理された未治療生検標本に、モノクロナル抗EGFR抗体を用い、ビオチン・ストレプトアビジン染色法を施行した。 結果は、EGFRは28例全例に染色され、染色の程度を、陽性細胞数の割合および染色の強さをそれぞれ(-、+、〓、卅)の4段階に区分した。局所再発群では10例中9例が、陽性細胞数の割合および染色の強さの両者が〓以上を示した。他方、局所非再発群では18例中9例が、陽性細胞数の割合および染色の強さの両者が〓以上であった。この両群のEGFR染色程度の差は統計学的に有意(Fisher's exact probability test,P<0.05)であった。 以上の結果より、上顎洞扁平上皮癌では、三者併用療法を施行した後局所再発をきたす割合は、EGFRが増加している症例に多いことが明らかとなり、EGFRが予後に関係することを証明した。 次いで、上顎洞癌より樹立した3種類の培養細胞を用いて、EGFRと放射線感受性の関係を検討した。EGFRの定量は画像解析装置とフローサイトメトリーを用いた。放射線感受性はコロニー形成率で判定した。 結果は、EGFR量と放射線感受性の関係は未だ明らかにすることができなかった。
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