研究概要 |
Retrospective studyでは、現在まで当教室にて検索および治療を行った16例の鼻副鼻腔原発のリンバ増殖性疾患について、臨床病理学的および免疫組織学的検討を加えた。 1)腫瘍の増殖形式から、Expanding typeとInfiltrative typeに分類すると、Expanding typeが5例、Infiltrative typeが11例であった。後者のtypeは臨床的に進行性鼻壊疽に相当するものであると考えられた。臨床病期分類では全例stageIであった。 2)病理分類では、Expanding typeの5例のうちDiffuse,small cleaved cell type;3,Diffuse,mixed cell type;2であった。一方Infiltrative typeの11例では、Diffuse,mixed cell type;6,Diffuse,immunoblastic type;5であった。すなわち進行性鼻壊疽症例の病理組織像では、浸潤細胞の多型性(pleomorphism)および腫瘍細胞と種々の炎症細胞との混在(polymorphism)が極めて高頻度に認められた。さらにcompartmentalizationおよび虚血性壊死像も特微的であった。 3)免疫組織学的検討では、Expanding typeでは3例がB細胞型、2例がT細胞型であった。Infiltrative type、すなわち進行性鼻壊疽症例では全例T細胞型であった。しかもこのT細胞性腫瘍はその細胞表面にHLA-DR抗原を有しており、活性化T細胞の表面形質を示した。 4)進行性鼻壊疽における免疫遺伝子の再構成の検索: 現在まで3例の進行性鼻壊疽症例において免疫遺伝子の再構成を検索した。3例ともT細胞受容体(TCR)遺伝子の再構成が認められたが、免疫グロブリン重鎖遺伝子の再構成は認められなかった。したがって遺伝子型からも進行性鼻壊疽におけるT細胞の単クローン性増殖が証明された。 5)進行性鼻壊疽とEpstein-Barrウイルスとの関連: 3例の進行性鼻壊疽組織についてEBウイルスの検索を行った。in situ hybridization法により3例中2例でEBウイルスDNAが腫瘍組織中に認められ、さらにサザーンブロット法によりこのEBウイルスの単クローン性が証明された。この成績は進行性鼻壊疽の発症においてEBウイルスが重要な役割を演じている可能性を示していると考えられた。 6)進行性鼻壊疽に対する治療法の検討: 現在まで3例の進行性鼻壊疽症例についてMACOP-P療法による治療を行い、経過を観察中である。
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