研究概要 |
(1)健康成人(20‐30歳)の被検者(15名)に対して、傾斜回転負荷装置(筑波宇宙センター内に設置)を用いて、頭部を中心軸とした傾斜回転時の眼球反対回施運動(OCR)を画像処理と高速演算処理を用いて赤外線眼球運動解析装置によりコンピュータ解析した。その結果、OCRの左右不対称な反応だけでなく不規則な運動性が動揺病の易罹患性に関係していた。 (2)水平・垂直認知検査装置を用いて、正常頭位、頸部左右屈曲位、傾斜椅子による前後左右傾斜時など頭位や体位が変化した場合のX,Y方向の空間識を分析し、予想以上に重力軸の認識が精度高く、身体軸の認識に個体差がめだった。 (3)被検者に対して心電計、呼吸器計、非観血的連続動脈波、指尖容積脈波計、皮膚電気反射計、電気眼振計、赤外線CCDカメラを装置し、回転加速度負荷装置(筑波宇宙センター内に設置)に固定し、コリオリ加速度負荷(6 rpm(0.628 rad/s)の等速回転から5 min 毎に回転速度を上げていき、最大30rpmまでとし、等速回転中は、前後左右に頭部を屈曲することを指示し、5min毎に30secの休息)を与えた。 (4)加速度負荷中、及び前後の各種の生体情報の変動をコンピュータを用いて解析した。同時に負荷前後の血液、尿の採取により、カテコラミン,ACTH,PRL,ADH (バゾップレシン),エン ドルフィンなどの変化を分析し、発症過程や症状との関連について詳細に検討した。その結果、罹患性の高い群では発症過程で上記のすべての生体反応のダイナミックな反応を示したが、低い群ではその過程の動きが明らかに少なかった。さらに易罹患性と視床下部・下垂体系ホルモンの分泌に有意な関係がみられ、動揺病の症状とADH,エンドルフィンの分泌に高い相関関係を認めた。以上より、耳石器の不規則な運動性と易罹患性との間に関係がみられ、動揺病の発症過程には、ADHを中心とした生体反応のダイナミックな変動がみられることがわかった。
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