研究概要 |
臨床病態における中耳真珠腫とTGFaの関連について 免疫組織学的検索により真珠腫組織におけるTGF-aの存在を確認した。一次抗体としてマウス抗ヒトTGF-aモノクローナル抗体(1:100)(Oncogean Science,USA)を反応させ、次いでストレプトアビジンキット(ヒストファイン)を用い、発色にはDABを使用した。 EGFならびにEGF-receptorのmRNAに対する合成DNAを用いたin situ hybridization 鼓室形成術が行われた中耳真珠腫症例10例を対象とした。5′末端にビオチンラベルしたオリゴヌクレオチドDNAプローブ(40塩基)を各々mRNA EGF,mRNA EGF-receptorに対し製作されたものを使用した。各々プローブの濃度は260ng/mlとした。 結果 抗TGF-a抗体を用いた免疫染色では正常外耳道皮膚、真珠腫上皮共に顆粒層が他の層に比べて濃染したものの両者の染色性の強い差は認められなかった。EGFmRNAの局在を調べた結果、正常外耳道皮膚において6例中1例にのみ基底細胞層にシグナルを認めたに過ぎなかった。一方真珠腫上皮においては10例中5例において基底細胞層に沿ってシグナルが発現しているのが観察された。EGF-rceptor mRNAのシグナルは正常外耳道皮膚においても6例中5例に基底細胞層に発現していたが、真珠腫上皮においては10例全例に、しかも上皮全層にわたって強いシグナルの発現が観察された。上皮層の中でも、とりわけ基底細胞層、傍基底細胞層には強く発現していた。 これらの結果からは、真珠腫上皮内にはEGFやTGF-aなどが正常と比較して異常に存在しているという事はないことが確認されたため、上皮進展にはリガンドの強い刺激による促進作用が影響しているというよりも、受容体の異常な発現が関与している可能性が強く示唆された。
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