内耳免疫疾患の発生機序の研究

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 04671054
• 研究機関: 日本医科大学
• 研究代表者: 富山 俊一 日本医科大学, 医学部, 助教授 (00094665)
• 研究分担者: 後藤 裕一 日本医科大学, 医学部, 助手 ; 池園 哲朗 日本医科大学, 医学部, 助手 ; 野中 学 日本医科大学, 医学部, 助手
• キーワード: 内耳免疫 / 蝸電図 / 聴性脳幹反応 / 温度眼振 / 自発眼振 / 内リンパ水腫 / 外リンパ抗体

研究概要

実験動物(モルモット)内リンパ嚢局所での免疫反応による内耳機能への影響を聴覚検査として蝸電図と聴性脳幹反応、前庭検査として温度眼振反応と自発眼振観察を行った。内耳形態への影響として同実験系で発生する内リンパ水腫の長期観察を行い、内リンパ水腫発生の機序を考察した。内耳の機能形態の変化は二次内耳感作群に著変を認めたが、対照群(一次内耳感作群、生食注入群)では認めなった。I)聴覚:A)蝸電図検査:感作後2日目記録で有意なAP潜時の延長、振幅低下を認めた。しかし7日目記録では有意な変化を認めなかった。21日目記録では振幅低下のみを認めた。蝸電図の変化はclick刺激、2-20kHzのtone pip刺激いずれにも認められ、機能障害は蝸牛全体に及んだ。SP・AP比は2日目記録で有意に増加し、その後減少した。B)聴性脳幹反応:感作後3日目と17日目の平均聴覚閾値が感作前と比較して有意に上昇した。しかしN_1-N_3波間の潜時の延長はなかった。II)前庭機能障害:A)温度眼振:感作後7日目の温度眼振反応が有意に抑制され、その後、回復するもの、回復しない群に区別された。B)自発眼振:刺激性眼振の出現時期が14.6±3.1時間目、持続時間は4.4±6.5時間、麻痺性眼振の出現時期が23.3±12.3時間目であった。これらの結果は内リンパ嚢に惹起された2次免疫反応に伴う炎症作用物質による内リンパ嚢、前庭、蝸牛への免疫組織損傷およびその結果生じる急激な内リンパ水腫の発生に起因すると示唆された。III)内リンパ水腫の経過と発生機序:この実験系での内リンパ水腫は二次内耳感作後2日目から急速に進展し、1週目以後消退し、7〜8週目頃から球形嚢、蝸牛基底回転、頂回転に内リンパ水腫の緩徐な再形成が見られた。初期の急速な成長は急性炎症に伴う血管透過性亢進による内リンパ生産過激と内リンパ液吸収障害が、後期の再発は内リンパ嚢慢性炎症による障害が示唆された。

研究成果

• [文献書誌] 池園 哲郎: "内リンパ嚢局所免疫動物の蝸電図" 日本耳鼻咽喉科学会会報. 95. 809-816 (1992)
• [文献書誌] 後藤 祐一: "内リンパ嚢局所免疫反応による内耳障害 -聴性脳幹反応への影響-" 日本耳鼻咽喉科学会会報. 95. 963-968 (1992)
• [文献書誌] 富山 俊一: "内リンパ嚢局所免疫反応による内リンパ水腫 -長期観察-" 日本耳鼻咽喉科学会会報. 95. 1906-1913 (1992)
• [文献書誌] Shunichi Tomiyama.: "Development of Endolymphatic Hydrops Following immuneresponse in the enoolymphatic sac of the guineapig" Acta Otolaryngol (stockh). 112. 470-478 (1992)
• [文献書誌] Shunichi Tomiyama: "Endolymphatic hydrops induced by immune response of the endolymphalic sac:Relatiou to perilymph antibody levels" An wals of otology.Rhinology & Laryugology. 101 suppl.152. 48-53 (1992)
• [文献書誌] Manabu Nonaka.: "Vestibular disorders following immune response of the endolywphatic sac in the guineapig" Aunals of otology,Rhindogy & Laryugology. 101 補157. 54-57 (1992)
• [文献書誌] Shwnichi Tomiyama: "Immunobiology in otology,Rhinology and Laryngology." Kugler Publications. B‐F・McCabe.J・E.Veldman and G.urogi., 407 (1992)