研究概要 |
1)モルモットの前庭器有毛細胞(VHC)を機械的および酵素的処理により単離し、遠心性神経伝達物質の同細胞内遊離Ca^<2+>濃度([Ca^<2+>]i)に及ぼす影響をFura-2を用いた画像解析により観察した。1mMAChを投与すると[Ca^<2+>]iは緩徐な上昇を示し、10μM ATPでは[Ca^<2+>]iは急激に上昇した。またGABAもATPと同様の急激な上昇を示し、したがってACh,ATP,GABAはモルモットのVHCにおいて遠心性の神経伝達物質と考えられた。一方CGRPやEnKを投与したところVHCの[Ca^<2+>]iには変化を認めず、したがってこれらは遠心性神経伝達物質ではなく一種の修飾物質でないかと考えられた。 2)モルモットの蝸牛内有毛細胞(IHC)を単離し、遠心性神経伝達物質の同細胞[Ca^<2+>]iに及ぼす影響を観察した。 結果はVHCにおいて観察されたものとほぼ同様であり、ACh,ATPは伝達物質,CGRP,EnKは修飾物質と思われた。ただATPによって生じる[Ca^<2+>]iの上昇は、AChの同時投与によって抑制されることがわかり、AChとATPはお互に拮抗作用を持つことが推測された。 3)単離されたIHCを電気刺激したところ、IHCが収縮することを初めて明らかにした。細胞内遊離Cl^-濃度([Cl^-]i)をMQAEを用いた画像解析により観察したところ、IHCの収縮と同時に[Cl^-]iは著明に減少することが判明した。この結果より収縮に併って細胞内の水分が細胞外へ流出したと考えられた。サイトカラシンB投与下では収縮は生じなかったことから、このIHCの収縮にはアクチン・ミオシン系が関与していると思われた。
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