研究概要 |
今年度の研究目的の一つである内リンパ管選択的閉鎖後の内リンパ組成の変化について、内リンパ管閉鎖一時間後に内リンパ嚢内のナトリウム、カリウムイオン濃度が減少するが、DC電位には変化は見られなかった。同時に内リンパ嚢内には染色性物質が充満していた。このことより内リンパ管閉鎖後生じた浸透圧の減少を糖蛋白を主体とした分泌物質および水が補填し、内リンパ腔の恒常性維持が保たれているのではないかと推察された。この成果は現在共同研究者の辻川らによって論文投稿中である。次にこの実験モデルを用いて、KLH,HRPによる全身感作後、二次免疫反応として同抗原を内リンパ嚢に注入し前庭より採取した外リンパ液中の抗体価を測定したが有意な上昇はみられなかった。一方内リンパ管閉鎖を行っていない感作動物では抗体価の上昇がみられることより、内リンパ嚢での局所免疫反応は外リンパ系を介して前庭、蝸牛に及ぶものと推察される。これについてはもう少し追加実験を行い発表したい。外リンパ瘻実験モデルの側頭骨病理の詳細は、発症初期では外リンパ圧低下による一過性の内リンパ水腫が蝸牛で観察され、一方前庭ではtrabecular meshの断列により卵形嚢の虚脱が観察された。14日目では卵形嚢は逆に膨隆しutricular‐foldおよびその弁状構造が圧迫、閉鎖された所見が観察された。このような構造変化による二次的な内リンパ水腫がメニエール病に類似した症状を起こしてくる所以と考えられる。この成果は共同研究者の久保らによって論文投稿が予定されている。
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