研究概要 |
メニエール病の主病態である内リンパ水腫の発生における内リンパ管と内リンパ嚢の免疫学的役割を検討した。選択的内リンパ管閉塞術による内リンパ嚢の形態、機能的変ならびに免疫学的検討では、嚢内のNa^+、K^+イオン濃度とDC電位の優位な減少がみられた。また腔内には数週間にわたって染色性物質の貯留がみられた。このことより内リンパ管閉鎖後生じた浸透圧の減少を糖蛋白を主体とした染色物質および水が補填し、内リンパ腔の恒常性維持が保たれているのではないかと推察された。免疫機能について、同実験モデルを用い、KLH、HRPによる全身感作後、二次免疫反応として同抗原を内リンパ嚢に注入し、外リンパ液中の抗体価を測定したが有意は上昇はみられなかった。一方内リンパ管閉鎖を行っていない感作動物では抗体価の上昇がみられた。このことから内リンパ嚢は内耳免役応答の場であることが確認された。骨髄移植によるGVHDモデルの実験では、内リンパ嚢に依存する免疫担当細胞は骨髄由来の細胞であることがあきらかとなった。外リンパ瘻実験モデルの側頭骨病理の詳細は、発病初期では外リンパ圧低下による一過性の内リンパ水腫が蝸牛で観察され、前庭ではtrabeculan mesh の断列による卵形嚢の虚脱が観察された。14日目では卵形嚢は逆に膨隆し、utricular-foldおよびその弁状構造が左迫、閉鎖された所見が観察された。このような構造変化による二次的な内リンパ水腫がメニエール病に類似した症状を起こしてくる所以と考えられた。内リンパ嚢の酸塩基平衡について、内耳の中で内リンパ嚢は唯一酸性(pH6,7)を示す。炭酸脱水素酸系阻害剤のアセタゾラマイドを投与し、内リンパ嚢内pHが低下し同時にHCO3^-やDC電位も低下した。この結果よりHCO3^-が内腔へ輸送されることが推察された。
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