1.Slc:SDラット(以下ラット)の耳胞は、胎生10.5日(体節数9-12期)から11.5日(体節数21-25期)の間に形成される。菱脳域の表皮(外胚葉)が肥厚し、耳プラコードが形成され、0.5日で耳ピットになり、さらに0.5日で耳胞が形成される。胎仔の大きさ約3.5mmに対し、耳胞の大きさは、頭尾方向に約280μm、背腹方向に約270μm、左右方向に165μmである。 2.細胞数は、耳プラコード約700、耳ピット約2800、耳胞約6000である。細胞数の増加、特に、耳ピット期以降の増加は、耳胞形成に本質的な役割を果たしてはいないと考えられる。 3.耳胞形成初期過程とマイクロフィラメントの関連はみられない。しかし、耳胞(耳ピット)からの予定聴神経節細胞の遊走、および、正常な耳胞形態の維持には、マイクロフィラメントが役割を果たしている。 4.ラット聴神経節は、神経冠由来細胞・神経管(神経板を含む)のlateral域由来細胞・耳クレスト(otic crest)由来細胞・耳胞(耳プラコード・耳ピットを含む)由来細胞が混合し形成される。神経管のlateral域は、将来の第4脳室前庭神経角に対応していると思われる。 5.神経冠由来細胞・神経管(神経板を含む)のlateral域由来細胞・耳クレスト(otic crest)由来細胞・耳胞(耳プラコード・耳ピットを含む)由来細胞の移動には、マイクロフィラメントが関連している。 6.生体内では、耳胞の体表側lateral域から細胞が遊走し、前聴神経節が耳胞のvental側に形成されるが、コラーゲン条件下でも、その特異性は維持されると思われる。聴神経節からのアクソンの伸長は、生体内では特定の方向に限定されているが、コラーゲン条件下では、その特異性が消失すると考えられる。
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