研究概要 |
脳回転状脈絡網膜萎縮症(以下GA)はオルニチンを代謝する酵素のひとつであるオルニチン・アミノトランスフェラーゼ(以下OAT)の欠損により生じる遺伝性網脈絡膜変性疾患のひとつであり高オルニチン血症を伴う。したがって本疾患の遺伝子異常はOAT遺伝子異常である。我々は日本人GA患者7名のOAT遺伝子異常を解明し,それらが日本人患者に特有の遺伝子異常であることを示した。またその遺伝子異常の違いにより,表現型である臨床像にも違いがあることを明らかにした。しかしまだ症例数が少ないため,全国レベルでの遺伝子異常地図は,分布が一定せずさらに研究を進める必要がある。さらに本疾患には眼内出血を伴う例が知られていたが,これは血液疾患のひとつであるvon Will-brand病の合併によることを明らかにした。 網膜色素変性症の原因に関し,我々は候補遺伝子としてロドプシン,S抗原,rds遺伝子のスクリーニングを行っている。その中で常染色体優性網膜色素変性症の一家系にロドプシン遺伝子異常Pro347Lenを見いだした。さらにその臨床像が欧米人の同じ遺伝子異常を持つ患者と類似し他のロドプシン異常患者の臨床像と異なることを示し,表現型との関連を明らかにした。現在rds遺伝子異常を示す家系も見いだしており,確認中であるとともに臨床像との関連も検討している。治療法として,網膜色素変性症に対し,有効なものは現在まで無かった。その中で我々は黄斑浮腫を伴う本症患者に対しアセタゾラミド投与を行い,浮腫の軽減,視力の向上という良い結果を得ている。引き続き,その効果の特続性や副作用の有無を検討中である。
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