糖尿病網膜症硝子体手術456眼を検索し、同一術者(岡野)の106眼で術後12カ月追跡した。線維血管性増殖膜形成過程は5期に分類できた。I:検眼鏡的裸新生血管に増殖膜に前駆して混濁が生じる。II:半透明の幼弱な網膜前混濁膜状物となる。III:線維化が生じるが、まだ新鮮で新生血管が顕性で、いわゆる赤い膜である。まだ収縮はない。IV:より発達して、強い線維化が顕著で収縮が生じ、牽引性出血がしばしば旺盛。いわゆる白い膜のうち新鮮な時期である。V:収縮し陳旧化した線維性増殖膜で、新生血管はあるが目立たなくなる。いわゆる白い膜の陳旧な時期である。しばしば軽重の網膜剥離を伴い牽引性出血はすでに目立たなくなる。成績は、改善/悪化は、IとIIで90%/0%。IIIで73%/17%、IVで33%/50%、Vは適期過ぎだった。結果として、手術適応はI〜IIIが望ましく、IV以上は遅かった。別のHutton分類での型検討では、進行したdiffuseが最も悪く、table-topがそれに次いだ。hammockやtentは良い成績であった。網膜を広い面で牽引している増殖膜は、あまり発達しないうちに、強く収縮する前に、黄斑部が牽引されぬうちに切除すべきことがわかった。別の本症治験群で、初回牽引性硝子体出血後1年以上追跡した110眼では、初回出血後7カ月以内に50%例が硝子体手術を要した。また、増殖膜初発から半年以内に72%例が手術適応となった。その適応期から2週経過で手遅れに至った例が4眼あった。初回出血や初回増殖膜発生から追跡できると、治療時期を大きく外れないで手術が適用でき、そのため成績の向上に役立つことが具体的にわかった。また、適期は勿論、重症例での成績や手技の向上に、粘弾液分層法が極めて有益であった。因みに、重症線維血管性増殖膜が関与した本症牽引性網膜剥離126例では、粘弾液分層法併用で、改善76%不変13%、悪化11%で、重症の割に良成績を得た。
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