同一術者(岡野)の糖尿病網膜症硝子体手術例211眼を検索し、術後12カ月以上追跡した。 線維血管性増殖膜形成過程は5期に分類できた。I:検眼鏡的裸新生血管に混濁が生じた時期。II:半透明の幼弱な混濁膜状物形成。III:線維化が生じ、まだ収縮はない。まだ新鮮で新生血管が顕性で、いわゆる赤い膜。IV:より発達して、線維化が顕著で収縮が生じ、牽引性出血がしばしば旺盛。いわゆる白い膜の新鮮な時期。V:収縮した陳旧化し線維増殖膜で、新生血管は目立たなくなる。いわゆる白い膜の陳旧期。しばしば網膜剥離を伴い牽引性出血は目立たなくなる。術後の改善・不変・悪化のうち、改善:悪化の%は、IとIIで90:0、IIIで73:17、IVで34:49%であった。成績から、手術適応はI〜IIIが望ましく、IV以上では遅かった。網膜を牽引している増殖膜は、発達しないうちに、強く収縮する前に、黄斑が牽引されぬうちに切除すべきである。増殖性変化の型からは、進行したdiffuse型が最も悪く、table-top型がそれに次ぐ。hammockやtent型は良成績であった。 初回牽引性硝子体出血後1年以上追跡した161眼では、初回出血後6カ月以内に50%が硝子体手術を要した。また、増殖膜初発から半年以内に75%例が手術適応となった。出血や増殖膜初発から追跡できると治療時期を外れないで手術ができるため、成績が向上することがわかった。 重症例での成績や手技の向上に、粘弾液分層法が極めて有効で、重症線維血管増殖膜が関与した本症牽引性網膜剥離182眼では、粘弾液分層法併用で改善75%、不変14%、悪化11%と、重症の割に良成績を得た。また、眼内ファイバースコープの併用で、従来の手術不能〜困難例での有効処理が可能になった。 増殖組織の時期、病型、黄斑剥離の有無、粘弾液分層法や内視鏡の併用などを適切に配慮・選択すれば、手技の安全性と術後成績を極めて向上させることができることがわかった。
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