再手術が可能でかつ定量的な新しい緑内障濾過手術の開発を目的とし、レーザーを用いた強膜穿孔術を猿眼に対して施行し、術前後の眼左ならびに視神経乳頭形状、脈絡膜血流量の変化を観察した。高出力アルゴンレーザー(HGMmodell120)を使用して猿6頭を用いて強膜穿孔術を施行した。穿孔創の大きさと濾過効果の関係を調べるため、直径100M(Nidec社)、200M(持田社)、300M(持田社)の3種類のファイバーを開発した。結膜干にヒアルロン酸ナトリウムを注入した後、結膜干にファイバーを挿入して輪部強膜側から前房へ向けてレーザーを照射し房水流出路を形成した。3種類のファイバーに対して各々2頭3眼に強膜穿孔術を施行し、1頭では他眼をコントロールとして、術前と術後1、3、5、7、14、28日2、3、6ヶ月目に細隙灯検査、Pneuma Tonometerによる眼左測定、Lasev-Flave cell meterによる前房炎症の定量的解析を行った。全例で強膜穿孔が得られ、ファイバー抜去とともに濾過胞が形成され眼左が干降した。照射に要したエネルギーは、1発の照射時間0.2秒の4〜5W、3〜5発で平均2、7Jであり、ファイバーによる差は少なく、この手技によって容易に濾過手術が可能であることが確認された。3ヶ月の時点で100M群の眼左は元に戻ったが、200M、300M群ではなお有意な低干を示している。前眼部検査では100M群では穿孔は既に閉塞、200M、300M群で軽度知彩嵌頓を認めた。予定観察期間の6ヶ月まで観察を続け、結果を平成5年11月の臨床眼科学会で発表する予定である。レーザースペックル装置、視神経乳頭形態計測装置による脈絡膜血流量、視神経乳頭形状変化の観察は浅麻酔干の猿では困難であった。この原因としてこれら装置による測定時間に5分間の固視状態が必要であることに起因すると考えられたため、現在装置の改良による測定時間の短縮を検討中である。
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