1)実験緑内障における高速軸索輸送の研究: 実験眼、正常眼の硝子体内へ注入した3H-leucineは、網膜神経節細胞に取り込まれ軸索輸送として視神経乳頭、更に視神経を通過する。正常眼圧(20-25mmHg)の眼圧を標識アミノ酸注入1時間後より6時間前房カニューレにて維持した。実験緑内障眼では軸索輸送量の減少が認められたが、視神経乳頭部での軸索輸送の停滞、障害は予想より軽度であった。これらの実験結果は眼圧を正常化することにより少なくとも高速軸索輸送の障害は軽減する可能性を示唆している。 2)実験緑内障における低速軸索輸送の障害の研究: 高速軸索輸送と同様に標識アミノ酸(200microCi/眼)を硝子体腔に注入し、3日、4日、次いで5日目に視神経乳頭部から視神経における軸索輸送の障害をオートラジオグラフにて検討した。実験緑内障眼においては正常眼にみられる生理的な停滞以外にも軸索輸送は視神経乳頭の特に強膜篩板部において明らかに異常な輸送の停滞、障害を示した。 更に興味深い事に、視神経においても所々に軸索輸送の停滞の所見が観察された。低速軸索輸送は実験緑内障眼においても障害される事が明かとなり、その障害は視神経乳頭だけでなく視神経自体にも存在していることが証明され、緑内障における視神経障害に深く関与している事が明かとなった。
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