研究概要 |
Vogt-小柳-原田病(VKH)は,自己メラノサイトを抗原とする自己免疫疾患であると考えられているがその詳細な免疫学的解析はなされていない.VKH患者末梢血中リンパ球(PBL)はヒトメラノーマ株P-36に対し細胞傷害活性を示すことは既知の事実であるが,本研究では細胞傷害活性を示す細胞のより詳細な免疫学的性質を解析することを目的とした.VKH患者のPBLをエフェクター細胞とし,標的細胞として^<51>Cr標識P-36を用い細胞傷害活性を調べ,さらに,VKH患者のP-36特異的細胞傷害性T細胞が認識するP-36細胞膜上メラノーマ抗原と複合体を形成するヒト主要組織適合抗原(HLA)を解析するために抗HLA-class I抗体および抗HLA-class II抗体による阻止試験を行った.その結果,P-36特異的細胞傷害活性は抗HLA-class I抗体で阻止できなかったが,抗HLA-class II抗体で阻止され,VKH患者のP-36特異的細胞傷害性T細胞はP-36のメラノーマ抗原-HLA-class II抗原複合体を認識していることが判明した.昨年度は,VKH患者の血清,前房水および脳脊髄液中のインターロイキン-2(IL-2)およびIL-6をELISA法で解析した.さらに,VKH患者より得たPBLをIL-2の刺激のもとにP-36と長期混合培養しP-36特異的細胞傷害性T cell lineを確立した.このcell lineはCD4^+CD8^-CD25^+HLA-DR^+TcRαβ^+TcRγδ^-で,IL-6およびIFN-γを産生することが判明した.このことから,VKHの免疫学的発症機序には各種リンフォカインの関与が示唆された.今年度は,このcell lineとT細胞腫CEMとのハイブリドーマを作成し,その免疫学的性質を解析したところ,このハイブリドーマはCD2^+CD4^+CD8^-CD25^±HLA-DR^-TcRαβ^±TcRγδ^-CDlla^+CD28^+で,P-36に細胞接着はするが,細胞傷害活性は示さず,その上清中には,IL-6,IL-2およびIFN-γは検出されなかった.
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