研究概要 |
リン酸塩系シリカ埋没材の鋳型に鋳造したチタンの表層には,溶湯-埋没材間の反応によって,多層構造の反応層(酸素安定化αケース,Si、P-rich相が局在する層,および針状結晶層)が焼付き層の下に生成し,これが歯科用金属としての純チタンの優れた性能を著しく低下させる.本研究は,この反応層がチタン鋳造体の機械的性質,特に疲労特性に及ぼす影響を検討するため,as-castの試験片と表層の反応層を除去した試験片とについて,準静的及び繰り返しの三点曲げ試験を行い,同時に,試験片から発生するアコースティックエミッション(AE)をリアルタイムに測定して解析した.得られた結果は以下のように要約される.1)as-castの場合は鋳型温度が高いほど破壊に至る繰り返し数は減少し,反応層を除去してやることにより疲労特性は著しく改善された.2)準静的な変形過程のAE解析では,as-castの場合は弾性限以下の低荷重レベル段階からAEが多く発生した.これは微視的なき裂がαケース内で発生して成長し,あるいは潜在き裂がαケースから内部へ進展する過程であることを確認した.3)繰り返し荷重の場合も,as-castの試験片からは最大振幅が60〜70dBのものと,50〜60dBの2種類のAEが発生した.いっぽう,反応層を除去した試験片は40〜50dBのごく弱いAEだけになった.AE特性の著しい相違は,反応層が疲労挙動に大きな役割を果たし,強いAEは微視的なき裂がαケース内で発生し,あるいは潜在き裂がαケースから内部へ進展する過程であることを示唆するが,確認のためにフラクトグラフィー的手法によって疲労き裂の動態観察を行う必要がある.
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