研究概要 |
ドライアイは涙液の異常により起こるとされているが、その臨床的な病状についての検討はあまり成されていなかった。この度平成4年度の研究費の補助により結膜細胞中へのリンパ球浸潤の定量的方法や涙液の蒸発量を無侵襲で測定する方法が開発され、英文論文として採択された。 原因論に関する研究は、ドライアイのうちシェーグレン症候群における涙腺に焦点を絞って行った。シェーグレン症候群における涙腺の浸潤リンパもないが、どのようにして涙腺を破壊しているかという機序につき、CTL(細胞障害性T細胞)がGranzyme,Perforinを産生し、これを放出することにより涙腺細胞を障害していると仮説を立てた。シェーグレン症候群6例においてGranzymeおよびPerforinのメッセンジャーRNAレベルでの亢進が認められたため、この仮説が裏付けられた。現在サイクロスポリンなどの免疫抑制剤によってこの細胞障害がどの程度コントロールができるか検討を行っているところである。また同時にシェーグレン症候群の病因論としてEBウイルスが関与しているとの見地からEBウイルスのDNAを涙腺と結膜からさらに検出を行った。またインターフェロンαをEBウイルスに対する感染抑制に使えるか否か検討するため、インビトロでの実験を行い治療への応用を考えている。本研究により現在ドライアイの機序の一部が明らかにされつつあり、その一部の機序に対して従来の対症療法的な人工涙液のみに留まらない新しいドライアイの治療が模索されつつある。
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