研究概要 |
正常人10名に対して、経頭蓋的磁気刺激を行い刺激前、中、後の背景脳波と視覚誘発反応の変化を分析した。その結果、刺激前および刺激後400msec以降においては背景脳波の各周波数帯域のパワースペクトルムや頭皮上の電位分布に変化を認めなかった。刺激前後のパターン反転刺激視覚誘発反応に有意差を認めなかった。経頭蓋的磁気刺激を白色家兎に対して最大強度(100%,1.9T)で一日100回刺激で総量5000回以上の慢性実験を行った。その結果、心理物理学的あるいは神経学的な異常を認めなかった。また刺激終了後、還流固定を行い病理組織学的に中枢神経系、視神経、網膜を検討した。その結果、後頭葉視中枢皮質および皮質下視路、視床、海馬、基底核、小脳、脳幹、視神経、網膜などに正常コントロールと比較して有意な形態学的変化を認めなかった。よって中期的には本刺激法は臨床的に安全な方法と考えられた。引き続き長期的な安全性の検討を行う。正常被検者10例の前頭前野area8に対して衝動性眼球運動開始前に経頭蓋的磁気刺激を最大強度(100%,1.9T)で行った結果、開始前100msecで刺激した際において衝動性眼球運動の発現が有意に抑制された。area8は衝動性眼球運動のプログラミングを行っているものと考えられた。滑動性眼球運動中に後頭領域を経頭蓋的に最大強度(100%,1.9T)にて磁気刺激を行ったが、滑動性眼球運動に変化を認めなかった。運動領野と感覚領野において皮質の磁気刺激に対する閾値が異なるものと考えられた。正常被検者10例に対して第7頚椎付近で最大強度(100%,1.9T)の磁気刺激を行い、その前後の瞳孔反応を電子瞳孔計にて計測した。頚部交感神経磁気刺激後1.5±0.49秒で瞳孔面積は最大となった。瞳孔面積は14.0±4.5%拡大し、散瞳持続時間は3.08±1.84秒であった。後頚部磁気刺激は毛様脊髄中枢を初めとする頚部交感神経が刺激され、それにより散瞳が引き起こされたものと考えられた。
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