生後4、6、8、10、15、20、30週齢のウィスター系ラットの上顎臼歯を用いセメント質の発生過程について組織学的、レクチン組織化学的、免疫組織化学的検索を行い以下の結果を得た。 1)ラット上顎臼歯の有細胞セメント質はその基質の染色性により明セメント質と暗セメント質とが識別され、明セメント質は歯根の遠心側に暗セメント質は近心側に分布していた。非脱灰研磨標本のX-線顕微法により暗セメント質は歯槽骨と同様のX-線透過性を示したが、一方明セメント質は歯根膜と同様のX-線透過性を示して非石灰化組織であるものと判断された。 2)明セメント質は各種のレクチンに対して陽性反応を示し、またグリコサミノグリカンに対するモノクローナル抗体、2B6及び3B3に強い陽性反応を示したが、抗オステオカルシン抗体には陰性であった。一方、暗セメント質は2B6及び3B3には陰性であり、抗オステオカルシン抗体に陽性反応を示した。暗セメント質は各種のレクチンに対して種々の陽性反応を示し、石灰化したセメント質も糖鎖構造に富む組織である事が明らかにされた。 3)セメント質を形成するセメント芽細胞は、抗オステオカルシン抗体により特異的に標識されて、セメント質形成の部位による相違を検索することが可能となった。またセメント芽細胞は各種のレクチンに対して強い陽性反応を示し、これらのレクチンがセメント芽細胞の標識に有効であることが示唆された。無細胞セメント質を形成するセメント芽細胞は、根幹のおつ面、歯根分岐部、および分岐部より下部の分岐歯根では根幹中隔に隣接する部位で強い抗体陽性反応を示した。
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