破骨細胞の多核化過程を解明する目的で、活性型VD_3により誘導されるマウス肺胞マクロファージの多核化過程を細胞外Ca濃度の影響に注目して微細構造学的にあるいは免疫組織化学的に検索し、次に細胞融合のKey stepとなっている接着機構にArg-Gly-Asp(RGD)含有蛋白をリガンドとするレセプターが関与している可能性を探るためにGRGDSP添加実験を行った。 【結果と考察】低Ca濃度(0.13mM)培地で4日間培養したマクロファージは多核化が完全に阻害されていた。その後、細胞外カルシウム濃度を0.13mMから1.85mMへ上昇させると8時間で約30%のマクロファージが細胞融合した。この変化は温度依存性で4℃では細胞融合は生じることなく、試料を37℃に移すと次第に多核化が進行した。培地中のCa濃度を0.13mMから1.85mMに上昇させた際のマクロファージの細胞内Ca濃度変化はあまり認められなかった。また細胞外Ca濃度の変化に呼応するような微小管の局在性の変化も認められなかった。しかしながら、細胞融合の過程において、細胞のより強い基質への付着性を示す細胞体の扁平化とF-actinの斑点状集積パターンの変化、さらに細胞辺縁部でのより緊密な細胞間接着が重要なステップとなっていることがSEMおよび共焦点レーザー顕微鏡観察によって示され、温度依存性・カルシウム依存性の細胞・基質間および細胞間接着機構がマクロファージの融合に重要な役割を果たしているものと推測された。 一方、GRGDSP添加実験の結果、8時間後には16.9%のマクロファージが融合していた。これらの細胞のF-actinの局在は細胞辺縁部に限局して認められる強い点状の集積がやや大きくなる傾向があるが、全体的な局在パターンはGRGDSP無添加群とほぼ同様であった。GRGDSP添加群と無添加群の細胞融合率の差は統計的には有意ではなく、RGDペプチドをリガンドとするレセプターの関与についてはさらに検討が必要と思われる。
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