研究概要 |
齲蝕、歯周疾患、歯内炎、感染根管病巣などから偏性嫌気性菌の培養技術の急速な進歩により多くの偏性嫌気性菌が検出されてきている。中でも偏性嫌気性グラム陽性桿菌であるEubacteriumに属する数多くの菌種が多数分離されている。口腔から分離されるEubacterium属の一部は生化学的性状検査にほとんど反応を示さず、終末産物も検出されない。このような菌株の鑑別を目的にEubacterium属各菌種から表層多糖を抽出し、糖組成を調べている。Eubacterium属ATCC登録株を使った前年度の研究では、表層多糖を構成する糖組成の違いによりEubacteriumの11菌種が、6つのグループにまとめることができた。今年度はEubacterium属の7分離株を用い、乾燥菌体から細菌表層多糖を抽出し、糖分析した。E.alactolyticumの2分離株は多量のrhamnose(rha),glucose(glc),galactose(gal)と少量のglucosamine(glcN)、galactosamine(galN)から構成されていた。E.rectaleの分離株はrha,gal,glc,gloNが主要な糖で少量のgalNから構成されていた。E.brachyの2分離株は少量のglu,glcN,galNから構成されていた。E.nodatumの3分離株は多量のglycerolと少量のglc,glcN,galNから構成されていた。分離株7株の糖組成はそれぞれ分類された菌種(対照)と全く同じ組成であることが明かになった。このように表層多糖の糖組成を検討することでEubacterium属細菌種の分類に有力な手段となりえることを示した。
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