研究概要 |
前年度の研究に引き続き,歯周病原性細菌,Actinobacillus actinomycetemcomitansの白血球毒素産生に影響を及ぼす環境因子を検討した。今年度は,バッチ培養とケモスタット培養での毒素産生の違い,そして栄養基質の濃度,酸素濃度が毒素産生に与える影響に重点をおいて研究を進めた。また,これまで用いてきた301-b株以外に,毒素非産生株(ATCC 33384)や毒素産生不定株(ATCC 29523)についても検討を加えた。 1)毒素産生は栄養基質濃度に依存する:主要な栄養基質としてフルクトースで細菌を培養する実験系では,菌体外に約1mM以上のフルクトースが存在すると,毒素産生は起こらない。2)微好気性:炭酸ガスを添加しない条件では,ある特定の好気度の範囲で増殖収率と毒素産生が最大となる。この微好気性はこの細菌のecological niche,すなわち,微好気的環境である歯肉溝での存在を説明するように思われる。3)毒素非産生株:A.actinomycetemcomitansの毒素研究の初期から,毒素非産生株の存在が指摘されてきた。しかし,最近,毒素非産生株においても毒素遺伝子を持つことがわかり,毒素産生は複雑な制御を受けていることが推察されている。そこで,301-b株で毒素産生が起こる同じ条件で毒素非産生株や毒素産生不定株をケモスタット培養した。その結果,両株において有意な毒素産生が認められた。 以上の結果は,次のステップである遺伝子レベルでの毒素の発現制御を研究するための重要な基盤になると考えられる。
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