研究概要 |
ヒト平滑面齲蝕の原因菌であるmutans streptococciがショ糖から合成する粘着性非水溶性グルカンは歯垢形成の主因子である。この粘着性グルカンは水溶性グルカン合成酵素(GTF-S)と非水溶性グルカン合成酵素(GTF-I)との共同作用によって合成されることから、α-1、6グルカン鎖とα-1、3グルカン鎖が相互に多分岐した複雑なネットワーク構成を造成していると推測される。 我々は、このグルカン合成のメカニズムを明らかにするために,mutans streptococciに属する菌種の S.cricetusHS-6から水溶性グルカン合成酵素遺伝子(gtf-s)をクローニングし、その酵素の構造と機能を検討することを目的とした。 ファージバンクからGTF-S遺伝子(11KbpのDNA断片)を分離し。更にサブクローニングによって得られた8.3KbpDNA断片には2つのopen reading frame(ORF)が存在していた。5'末端のORFはS.downeiのGTF-S遺伝子と73.9%,推定アミノ酸配列では77.4%の相同性が認められ、更にその下流に存在するORFはS.sobrinusのGTF-T遺伝子と79.7%,推定アミノ酸配列では83.5%の相同性が認められた。StreptococciのGTFペプチドに保存されている活性領域のアミノ酸配列も両遺伝子に存在していた。今後、これら2つのGTFペプチドの大量発現系を作成し、ペプチドの構造と機能を検討していく。
|