研究概要 |
〔目的〕単球/マクロファージや好中球などの炎症性細胞が成人型歯周疾患患者の歯周組織に著明に浸潤していることは病理学的に認められている。これら細胞は炎症性サイトカインを介して本疾患に認められる歯肉の炎症や歯槽骨の吸収の成立に強く関与していると考えられる。したがい、本患者の歯周組織におけるこれら細胞の走化性因子の動態とその浸潤機構を明らかにすることは意義がある。本年度文部省科学研究助成金で私共は、本患者の歯周組織における単球走化性因子MCP-1/JEの発現とP.gingivalisリポ多糖体によるその発現誘導効果について検討した。 〔材料および方法〕1)単球走化性活性;ヒト末梢血より単核細胞を分離しmultiwell chemotactic chanberを用いて測定した。2)単球走化性因子MCP-1/JEの発現;MCP-1/JE遺伝子発現はNothern blotting analysisを行ない求めた。また、その遺伝子産物についてはMCP-1/JE特異抗血清を用いて調べた。3)歯周組織とその細胞;健常ならびに本疾患患者歯肉組織また継代歯肉線維芽細胞を用いた。4)P.gingivalisリポ多糖体は梅本教授より分与を受けた。 〔結果〕1)本疾患患者の歯肉組織に高いMCP-1/JEの遺伝子発現が認められた。2)P.gingivalis線毛とリポ多糖体は歯肉線維芽細胞はMCP-1/JE遺伝子とその産物を著明に発現した。免疫沈降試験よりその遺伝子産物は分子量11,000と15,000のα,β型であることが解かったは3)本疾患患者の歯周ポケット浸出液中の単球走化性活性はその進行度に相関して上昇した。 〔考察〕本研究の知見から、単球走化性因子MCP-1/JEは本疾患の病原性機構において機能的役割を演じているものと思われる。
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