本研究は、1.歯周疾患に罹患した露出歯根面に対する結合織性付着および上皮性付着のメカニズムを解明すること、2.結合織性付着と長い付着上皮による上皮性付着との、治癒過程での変化を解明すること、3.長い付着上皮における上皮細胞の動態を解明すること、を目的として実験を行った。平成5年度では平成4年度に引き続いて、ラット上顎臼歯歯間部に矯正用ゴム片を1週間挿入して歯周炎を引き起こし、露出した歯根面の最深部に基準点として楔状切痕をつけ、治癒過程の経時的な観察および、免疫組織化学的検討により、以下の結果を得た。1.平成4年度の研究により、長い付着上皮による上皮性付着は、結合織性付着と均衡をとりながら、最終的には結合織性付着によって置換される可能性があることが示唆されたが、追加実験においても同様の結果を得た。2.免疫組織細胞化学的検討では、(1)ラミニンおよび4型コラーゲンは、長い付着上皮の結合織側すなわち、外側基底板に相当する部に陽性反応が見られた、(2)フィブロネクチンは、結合織性付着部などに陽性反応を認めたが、特異的な局在は明らかではなかった。3.上皮細胞核のPCNA(Proliferating Cell Nuclea Antigen核内増殖抗原)の局在の免疫組織化学的観察では、長い付着上皮においては、口腔粘膜上皮と比較して陽性細胞の数が少ない傾向が見られた。これらのことから、長い付着上皮は結合織性付着へと置換されていくことが示唆され、さらにその細胞増殖能については口腔上皮より少ない可能性が示された。
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