骨形成細胞の種々の機能を研究するには、in vitroにおいてin vivo同様に骨基質を生産し石灰化し、骨形成を行う株化した細胞系を得るのが望ましい。現在、上記の条件を満たす“正常"の株細胞は少なく、多くは腫瘍を起源としている。 申請者は、残された研究生活3年間に正常ラットを起源とする株細胞の樹立を第一目的とし、本年は細胞を初代より継代へと培養を行ってきた。 方法 1.研究材料 :細胞はWistar系ラット19〜21日目の胎児の頭蓋冠を細片にした後、以下の培養方法により骨片からoutgrowthした細胞を継代培養することにより得る。 2.細胞の培養:骨片は、35mm dish一個当たり2〜3個を、10%牛胎児血清・100μ/ml penicillin・100μg/ml Streptmycinを含むα-MEM培地(pH7.4)を用い培養し、2日毎に培養液交換を行いその際細胞の増殖状態を観察した。 3.継代培養 :初代培養において、増殖力が強くかつ形態が同一と考えられるdishの細胞をpre-confluenceに達する毎に、60〜90mmのdishに移植し継代培養を続行している。 結果 現在、二十数回に亘る初代培養を行い、一回につき少なくとも10dish以上を培養し、計100dish以上の継代を試みている。その結果、18細胞系について、骨芽様細胞とみられる細胞系が得られ、それらの継代培養並びに各継代の細胞の凍結保存を行っている。これらの中には、培養3〜5日間で石灰化と考えられる部位も認められ、系統樹立への可能性を示したものとして今後の研究の進展が期待される。また、継代培養はすでに12代以上続けられている細胞系もある。同時に初代培養も試みており、この中からも株細胞となり得るものも出るものと考えている。 来年度は、株化樹立の確定並びにそれら細胞系について第二目的である石灰化における酵素の生理的役割について検討したい。
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