研究概要 |
骨形成細胞の機能を研究するには、in vitroにおいてin vivo同様に骨基質を生産し石灰化し、骨形成を行う株化した細胞系を得るのが望ましい。現在、上記の条件を満たす"正常"の株細胞は少なく、多くは腫瘍を起源としている。 本研究は正常ラットの骨芽細胞の株細胞樹立を目的とした。 方法 研究材料:(1)細胞は、Wister系ラット19〜21日目の胎児の頭蓋冠を細片し、35mm dish一個当たり1〜2個静置し、それらの骨片よりout growthした細胞より得た。 (2)細切した頭蓋冠よりコラ-ゲナーゼ消化法を用いて得た細胞を、1〜数細胞を培養して得た。培養は標準的α-MEN培地を用い通常の方法で行った。 継代培養:初代培養において、増殖力が強くかつ形態が同一と考えられる細胞を、pre-confluence(約7日間)に達する毎に90mmのdishに移植し、継代培養を続行した。 観察:光学並びに透過型電子顕微鏡により、細胞培養・石灰化組織形成を観察し、また生化学的にアルカリ性ホスファターゼの消毒を計測した。 結果 継代培養並びに石灰化能:平成4年より二十数回に亘る初代培養を行い、計100以上の継代を試みた。その結果、18系統について、5代毎に凍結保存を行っている。これらの中には、培養3〜5日間で前石灰化と考えられる部位も認められ、系統樹立への可能性を示したものとして、その中の数系統を3年間に亘り80代継代培養を続けている。 ALPase活性:活性はp-nitorophenyl phosphateを基質に用いて測定したが、全細胞系を通じ線維芽細胞より高くかった。また継代を経ると共に減少するが、石灰化能を有すると推定される系の細胞では、培養日数と共に漸次上昇し、石灰化部位が出現する直前に最大に達した。 石灰化組織形成:培養2日目より28週(7カ月)に亘り観察した。 〔2日目〕細胞内小器官未発達の細胞が単層〔7日目〕や発達した小器官の細胞が複層。線維出現〔2週目〕多層の細胞、隆起出現。基質にコラーゲン線維確認。〔6週目〕結節出現。その表面には、骨芽細胞様細胞が認められ、その内層には層状配列の細胞が見られる。〔28週目〕更に層状構造は発達し、コラーゲン線維群間にはCa,Piより成る針状結晶が認められ、埋入した細胞は骨細胞に似ていた。以上、ラット胎児頭蓋冠由来の石灰化能を有する若干数の細胞系を現凍結保存し、今後の研究に利用し得ると考えている。
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