本研究の今年度の実施計画では、当初レーザー式組織血流計による歯髄組織血流量とアラキドン酸代謝亢進との関連性についての研究を予定していたが、研究費の削減等の理由で不可能となったため、消耗品などの研究予算との関係を考慮し、この研究を一時保留することとした。そして、エンドトキシン投与後、歯髄組織中の組織障害のマーカーの一つである過酸化脂質をTBA法で測定し、組織障害の有無を検討した。まず、アラキドン酸代謝亢進作用がもっとも顕著であった、エンドトキシン2mg/kgを静脈内投与して1、2、4時間後に歯髄組織内の過酸化脂質濃度を測定した。その結果、いずれの時間においても有意な差は認められなかったが、4時間後では増加する傾向が認められた。一方、エンドトキシン10mg/kgで4時間処理した場合には有意な過酸化脂質の増加が認められた。そこで、同様に肺および空腸組織について検討したが、エンドトキシン2及び10mg/kgのいずれにおいても有意な影響は認められず、歯髄組織はエンドトキシンにより障害を受けやすいことが示唆された。このことは以前アラキドン酸代謝の面からも支持されている。このような歯髄組織内の過酸化脂質の上昇は、組織障害により組織内に浸潤した白血球が活性化されて活性酸素が放出されたためとも考えられ、この点に関しては今後、組織学的検討を行うことにより明らかにする必要がある。しかし以前、エンドトキシン投与後の血管透過性を検討した結果では有意な血管透過性の亢進作用は見られなかったので、エンドトキシンによる過酸化脂質上昇作用は、循環障害による虚血性変化の可能性も考えられる。そこで、来年度の計画として、虚血の指標としてATP分解についての検討を新たに加えることとし、この点についてさらに検討を進めている。
|