研究概要 |
大脳皮質前帯状回の刺激により,行動学的な疼痛反応を引きおこし,また,この部位を破壊すると鎮痛作用が発現することが報告されている。組織学的には,前帯状回は,視床正中核群からの投射を密に受け,中脳水道周囲灰白質へ下行性の投射線維を送っていることが示されている。したがって,前帯状回が下行性鎮痛機序に深く関与していることが推定される。本研究では,脊髄に投射する中脳水道周囲灰白質ニューロン活動に対する前帯状回刺激効果をラットを用いて検討することによって,下行性鎮痛発現機序における前帯状回の役割を調べた。 実験にはサイアミラール麻酔下のウィスター系ラットを用いた。中脳水道周囲灰白質ニューロン活動の記録にはガラス多連管微小電極を用い,前帯状回の刺激は電気刺激(0.1ms,50〜150μA,単発)と化学刺激(0.01Mグルタメイト,1〜2μl)を用いた。 前帯状回を電気刺激すると,約半数の中脳水道周囲灰白質ニューロンでは,その自発放電活動が減弱された。化学刺激によっては,約65%のニューロンで放電数の減少がみられ,この効果は,GABA_Aレセプターの拮抗薬であるビキュキュリンの局所投与によって拮抗された。これらの刺激効果は,同側の前帯状回刺激の効果の方が大きく,また腹側に位置する中脳水道周囲灰白質ニューロンに対しての方がより強い減弱効果を示した。 以上により,大脳皮質前帯状回から下行性の中脳水道周囲灰白質ニューロンに対しては抑制性の作用があり,この効果発現にはGABA_Aレセプターを介するものがあることが示唆された。
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