研究概要 |
大脳皮質前帯状回(Anterior cingulate cortex,ACCX)には、セロトニン含有ニューロン終末が密に分布し、また、セロトニン受容体もV層を中心として存在している。組織学的データによれば、ACCXは痛覚情報の中継核のひとつである視床髄板内核群からの入力を受け、内因性鎮痛発現に不可欠の中脳水道周囲灰白質(PAG)へ下行性の投射線維を送っていることが明らかにされている。したがって、ACCXは痛覚の情報処理過程に深く関与していることが示唆されるが、ACCXニューロンの侵害受容性応答とACCXに存在する内因性セロトニンの役割については報告がない。そこで、PAGに投射する下行性ACCXニューロンに注目し、機械的刺激にたいする侵害受容性応答を調べセロトニンの作用を検討した.記録したACCXニューロンにはすべて低頻度の自発放電が見られ、そのうち約40%は末梢受容野を有していた。受容野の大きさは、半身以上にわたるものがほとんどであった。機械的刺激に対する応答から、WDRタイプとNSタイプとに大別されLTMタイプニューロンは見られなかった。持続的ピンチ刺激に対し、NSニューロンの約70%では初期興奮性応答ののち、抑制性応答が続く二相性の応答が見られたが、WDRタイプニューロンでは興奮性応答のみが出現した。MSGの投与(20-40nA)によってNSタイプニューロンの抑制性応答は消失したが、興奮性応答はNSおよびWDRニューロン双方において変化を受けなかった。以上により、内因性セロトニンはACCXにおける抑制性の侵害受容性応答発現に関与することが示された。
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