成ラット大錐体神経の積分応答の解析によってこれまでに、1)四基本味に対する各味質について一定濃度範囲の応答を全て加算した総応答量を求め、鼓索神経応答と比較した結果、特にsucroseに対する応答性がphasicおよびtonic応答共に約25%ほどで鼓索神経の15%に比して著しく高く、その分NaClに対する応答性が低い、2)Na-saccharin、糖、等の甘味物質に対して高い応答性を示し、0.5M糖溶液に対する応答の序列は、surose>fructose>lactose>maltose>galactose>glucoseであり、鼓索神経応答と比較してlactoseに対する応答性が高い、3)鼓索神経応答ではamilorideによってNaCl応答が顕著に抑制されるのに対して、大錐体神経ではamiloride感受性がほとんどない、4)大錐体神経では鼓索神経と同様にL-塩基アミノ酸に対して大きな応答を示すが、中性L-アミノ酸には比較的小さな感受性しか示さない、5)鼓索神経ではPheおよびTrp以外はL-体の方がD-体と同じかより大きな応答を引き起こすが、大錐体神経ではArg、Lys、SerおよびThr以外はD-体の方が有意に大きな応答を引き起こし、特にHisでその傾向が著しい、6)大錐体神経ではL-Arg-HClはNaClおよびNH_4Clでadaptしにくいが、NaClおよびNH_4ClはL-Argによくadaptする、7)D-AsnはNaClおよびNH_4Clとはcross-adaptしにくいが、sucroseとは比較的よくcross-adaptする、ことなどが分った。さらに、大錐体神経の単一神経線維の応答解析によって8)sucrose感受性を示す線維は甘味物質以外の呈味物質に対する応答性が低く特異性が高い傾向がある、9)sucrose感受性をもつ線維はD-Hisに対しても大きな応答性を示す、ことなどが分った。これらの中で大錐体神経がamiloride感受性を示さないことおよびD-アミノ酸に対して大きな応答性を示すことは、特に重要な知見であると思われる。
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