ラット軟口蓋に分布する味蕾の数は出生時に約200個で、その数は3週齢以降に観察される味蕾数に匹敵した。そのうち味孔の確認できたものは50個であった。一方、舌前部に分布する茸状乳頭味蕾の数は、出生時には100個に満たず、味孔が観察されず、出生後4週間に急速に増加して200個に達することが明らかになった。軟口蓋味蕾を支配する大錐体の神経応答を記録した結果、ラットおよびハムスター共に、軟口蓋の甘味刺激に対して高い応答性を示した。特に、ラットにおいては、糖類のみならず各種のアミノ酸による味覚刺激に対して大錐体神経は大きな応答性を示した。さらに、ラット鼓索神経では一般にL-アミノ酸の方がD-アミノ酸よりも大きな味覚刺激効果が得られるのに対して、大錐体神経ではほとんどのアミノ酸のD-体の方が著しく大きな味覚刺激効果を示した。さらに、大錐体神経および鼓索神経の両方もしくは一方を両側性に切断した場合、蔗糖による味覚嫌悪学習効果は著しく減退し、その序列はGSP+CT>GSP>(〕 SY.gtoreq. 〔)CT>shamであった。出生時に既に軟口蓋に多数の味蕾が分布していること、およびそれらの味蕾がアミノ酸を含めた多くの甘味物質に対して大きな応答性を示すこと、さらに行動実験結果からも、大錐体神経が甘味情報の媒介に重要な役割を果たしていることが明らかであることなどを考えると、軟口蓋味蕾が出生後の授乳期に極めて重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
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