耳下腺アミラーゼ分泌におけるAキナーゼ(cAMP依存性蛋白質リン酸化酵素)の触媒・調節、各サブユニットの役割を明らかにするため、ラット耳下腺細胞を溶血性細菌毒素のストレプトリジン-O、および高濃度のサポニンで処理し、細胞膜にこれまでより大きな穴を明け、触媒・調節、各サブユニットを直接導入してその作用を調べた。 これまでの研究経過を以下個条書きで示す。 1、シグマ社製のストレプトリジン-Oを購入、ラット耳下腺細胞とインキュベーションすることで透過性細胞の調製を試みたが、赤血球の溶血をおこす濃度の数倍から数百倍のストレプトリジン-Oを加えても細胞膜を穿孔する兆候は認められなかった。 2、サポニン濃度を段階的に上げ、アミラーゼの漏出とcAMPに対する応答能の変化を調べ、同時に、プロプラノロール、アトロピン、EGTAなどの添加効果を検討した。その結果、10uMプロプラノロール、2mMEGTA存在下で、サポニン濃度を40ug/mlまで上げてもcAMPに対する応答能が失われないことを確認した。 3、上記の条件下でラット耳下腺細胞を牛心臓のAキナーゼ触媒サブユニットとインキュベーションしたが、アミラーゼ分泌促進効果は認められなかった。また、牛心臓のAキナーゼ調節サブユニットにもcAMPの作用を増強する効果は認められなかった。 4、最近、GIBCO社製のストレプトリジン-Oを購入、その効果を調べたところラット耳下腺細胞の細胞膜を穿孔することが確かめられた。今後は、この方法で、Aキナーゼの各サブユニット導入の効果をさらに検討する予定である。
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