今まで大脳皮質の感覚野(SI)、運動野(ICMSで顎顔面口腔領域に運動効果を認める冠状溝吻側部のC領域、前シルビウス溝外側部のP領域と十字溝腹側部のM領域)と咀嚼野(MA)の摂食行動時の役割を知るために、覚醒ネコの各領域で単一ニューロン活動を細胞外記録し、咀嚼運動に関連してニューロン活動を変化するMRニューロン(MR)の受容野の位置や拡がり、感覚種、ICMSの運動効果と各ニューロンの咀嚼運動時の活動様式を検索した。その結果、SIニューロンの約半数が咀嚼運動に従ってリズミカルに活動を変化したPost‐movement type (Post)のMRで、これらは咀嚼運動に伴う末梢の感覚情報をモニターし、円滑な咀嚼運動実行に関与していると推察された。 今年度は、C、PとM領域の咀嚼運動時のニューロン活動様式について調べた。各領域のMRは、共は多くが舌、口周囲部や下顎部に受容野を持ち、活動様式は、舌、顎や口周囲部の運動あるいは咀嚼運動の開始に先行してその活動を変化するPre‐movement type(Pre)とPostが認められた。C、PそしてM領域のPreとPostの割合は、それぞれ35%と60%、50%と45%そして70%と20%であった。以上より、MとP領域はPreが多いことより、主に咀嚼運動に関連した顎舌顔面筋の運動の開始に、またC領域はPostが多いことより主に咀嚼運動時の感覚入力と運動出力の統合に関係している可能性が示唆された。 今まで各typeの分類は、咀嚼筋、舌筋、顎二腹筋に慢性的に埋め込んだ電極より記録した筋活動とニューロン活動の解析により行った。しかし、顔面表情筋のように薄く小さい筋に独立して電極を埋め込むことが困難な場合はその解析に苦労した。今回はビデオ映像解析装置の購入で、顔面皮膚の動きを分解して表示できることから、運動とニューロン活動との関係を容易に調べられた。
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