研究概要 |
平成5年度科学研究費補助金実績報告書(研究実績報告書)600〜800字 ベンゾジアゼピン(BZ)系薬物であるミダゾラムの側坐核ドパミン遊離に及ぼす効果について検討した。 側坐核のドパミン遊離はBZレセプターアゴニストのミダゾラム(0.075,0.15mg/kg i.v.)の投与により用量に依存して減少したが,逆アゴニストのbeta-CCE(3,10mg/kg i.p.)の投与では逆に用量に依存して増加した。これらの,ミダゾラムによる減少とbeta-CCEによる増加は,共にBZレセプターアンタゴニストのフルマゼニールの併用により完全に抑制された。以上の結果は側坐核のドパミン遊離機構がBZレセプターによって制御されていることを示唆するものであり,ミダゾラムによった惹き起こされた同部位のドパミン遊離の低下はBZレセプターを介したものであることを示唆するものである。しかし,BZ系薬物は中枢のアデノシンの再取り込みを抑制することが報告されているので,BZ系薬物の効果の一部は,再取り込みが抑制された結果シナプス間隙中で増加したアデノシンを介して発現した可能性も否定できない。そこで次に,ミダゾラムによる側坐核ドパミン遊離の減少効果においてもアデノシン系が係わっている可能性についてアデノシン系薬物を用いて検討した。その結果,ミダゾラムによるドパミン遊離の減少はアデノシンA_1,A_2レセプターそれぞれのアンタゴニストであるCPDX(25mg/kg i.v.)およびDMPX(1mg/kg i.p.)によって影響されなかった。また,アデノシンA_1レセプターアゴニストのCHA(0.1,1mg/kg i.p.)単独投与はドパミン遊離を抑制せず,むしろわずかに増加させることが認められた。以上の結果より,アデノシン系はミダゾラムの側坐核ドパミン遊離減少効果には関与していないことが明らかとなった。
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