研究概要 |
唾液腺に於けるcGMPの役割を調べる事を目的として,本物質の合成酵素である膜結合型guanylyl cyclase(G cyclase)の存在と唾液腺のANP受容体遺伝子の発現,およびANP刺激による唾液腺細胞内cGMPの濃度,およびamylase分泌の変化を調べ,以下の結果を得た。 1)ヒト顎下腺cDNAライブラリーの8×10^5フェージからラットG cyclase A cDNAのSac Iフラグメントをプローブとしてスクリーニングを行い,3クローン(HGC-A-25A,-33A,-16B)を得た。 制限酵素地図及び塩基配列の解析の結果,それらは全てヒト G cyclase A cDNAの塩基配列と一致した。しかし,G cyclase Aと相同性の高いG cyclase BのcDNAクローンを得る事は出来なかった。顎下腺でANP受容体遺伝子(G cyclase A)は発現していたが,CNP受容体遺伝子(G cyclase B)は発現していないと推測された。 2)ラット耳下腺及び顎下腺細胞膜画分と^<125>I+ANPとの結合は,タンパク質量に比例して増加しプラトーに達した。ANPによる結合阻害実験から,IC_<50>値は,耳下腺5×10^<-9>M,顎下腺10^<-9> Mであった。この結果から,唾液腺にANP受容体タンパク質が存在する事を確認した。 3)ラット耳下腺の腺房細胞を用いて、ANP及びcarbachol刺激による細胞内cGMP,cAMPの濃度変化を調べた。Carbachol(10^<-5> M)による濃度変化は,コントロールに比較し5%上昇したにすぎなかったが,ANP(10^<-7> M)の場合にはコントロールの2倍を超える上昇が認められた。ANPはcAMPの濃度変化に対してはほとんど影響を与えなかったが,forskolinによるadeny late cyclase の活性化を抑制することが明かになった。 4)ANPは単独で,またforskolinで促進された耳下腺からのamylase分泌を抑制することが明かになった。
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