研究概要 |
耳下腺に於けるcGMPの役割を調べる事を目的として、ラット耳下腺ANP受容体遺伝子の発現、およびANP刺激によるcGMP、cAMP濃度変化およびamylase分泌に与える影響を調べ、以下の結果を得た。 1)ラット耳下腺及び顎下線細胞膜画分と^<125>I-ANPとの結合は、タンパク質量に比例して増加しプラトーに達した。ANPによる結合阻害実験から、IC_<50>値は、耳下腺5×10^<-9>M,顎下腺10^<-9>Mであった。唾液腺にANP受容体タンパク質が存在する事を確認した。 2)ラット耳下腺の腺房細胞をANP(10^<-7>M)で刺激するとコントロールの2倍を超えるcGMPの上昇が認められた。また、ANPはcAMPの濃度変化に対してはほとんど影響を与えなかったが,forskolinによるadenylate cyclaseの活性化やamylase分泌を抑制することが明らかとなった。 3)ANP,nitroprusside(NP),hydroxylamine(HA)は、forskolinの存在の有無に係わらずcGMP濃度を上昇させた。他方、ANPはforskolinによるcAMP濃度の上昇を抑制したが、NPやHAにはこの抑制作用は認められなかった。また、forskolinやdi-Bu-cAMP、isoproterenolによるamylase分泌はANPにより抑制されたが、NPやHAでは変化がなかった。これらの結果、耳下腺におけるANPによるcAMP濃度減少やamylase分泌抑制に、細胞内のcGMPの直接的な関与はないと推定された。 4)forskolinやisoproterenolによって誘導されるcAMP濃度上昇やamylase分泌はANPによって抑制されるが、この抑制は耳下腺細胞および耳下腺細胞膜をpertussis toxin(PT)で処理することによって抑制された。耳下腺腺房細胞をPT処理するとGiタンパク質がribosylationを受けることにより、ANPのcAMPおよびamylase分泌抑制はANP clearance受容体を介したGiタンパク質によるアデニル酸シクラーゼ活性の抑制に基づくと推定された。 6)耳下腺細胞内ホスホジエステラーゼ(PDE)の分離同定を行い、PDE特異的抑制剤に対する感受性や分子量測定によって、タイプI,II,III,およびIV cAMP-specific PDEが存在することを明らかにした。
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