研究概要 |
昨年度、ラット耳下腺に心房性利尿ナトリウムペプチド(ANP)受容体が存在し、ANP刺激により細胞内cGMP濃度が上昇する事を明らかにした。今年度は、引き続き耳下腺に於けるANPのforskolinやβ-agonistに対する影響とその機構、およびANPによって生成されるcGMPの役割について検討した。 1)ANP,nitroprusside(NP),hydroxylamine(HA)は、forskolinの存在の有無に係わらずcGMP濃度を上昇させた。他方、ANPはforskolinによるcAMP濃度の上昇を抑制したが、NPやHAにはこの抑制作用は認められなかった。また、forskolinやdi-Bu-cAMP、isoproterenolによるamylase分泌はANPにより抑制されたが、NPやHAでは変化がなかった。これらの結果、耳下腺におけるANPによるcAMP濃度減少やamylase分泌抑制に、細胞内のcGMPの直接的な関与はないと推定された。 2)forskolinやisoproterenolによって誘導されるcAMP濃度上昇やamylase分泌はANPによって抑制されるが、この抑制は耳下腺細胞および耳下腺細胞膜をpertussis toxin(PT)で処理することによって抑制された。耳下腺腺房細胞をPT処理するとGiタンパク質がribosylationを受けることより、ANPのcAMPおよびamylase分泌抑制はANP clearance受容体を介したGiタンパク質のアデニル酸シクラーゼ活性の抑制によると推定された。 3)cGMPの役割を調べるため耳下腺腺房細胞のcGMP-dependent protein kinase(g kinase)の存在を合成基質を利用し調べたが、g kinaseの活性を認めなかった。 4)cGMPの耳下腺細胞内ホスホジエステラーゼ(PDE)に対する影響を調べることを目的とし、まず耳下腺に存在するPDEの分離同定を行った。PDE特異的抑制剤に対する感受性や分子量測定によって耳下腺細胞内に、タイプI,II,III,およびIV cAMP-specific PDEが存在することを明らかにした。
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