研究概要 |
ヒトの体液性低分子シスタチン(シスタチン S,SA,SN,C)は体内に存在するシステインプロテアーゼの活性調節や生体防御などの役割を果していると考えられる。最近ではシスタチンの抗ウィルス作用が注目され、シスタチンを有効利用しようとする動きがある。 我々は既に、ヒトシスタチンの生合成を支配する遺伝子ファミリーを第20染色体にマップし、少なくとも7つのメンバー遺伝子が存在することを示した。大部分のメンバー遺伝子は我々によって明らかにされた。ヨーロッパの研究グループとの協議によって、シスタチン遺伝子の命名を次の様に統一することにした;CST1(シスタチンSN遺伝子),CST2(シスタチンSA遺伝子),CST3(シスタチンC遺伝子),CST4(シスタチンS遺伝子),CST5(シスタチンD遺伝子),CSTP1(シスタチン偽遺伝子),CSTP2(シスタチン偽遺伝子)。 次に我々はヒトシスタチンを大腸菌に大量生産させ,その用途開発を行う目的でシスタチンの発現ベクターの構築にとりかかった。シスタチンCの完全長のcDNAはヒト顎下腺cDNAライブラリーよりクローニングし、完全長の唾液型(S型)シスタチンのcDNAはヒト顎下腺cDNAを鋳型としてPCR法によって行った。得られたcDNAを発現ベクターpKK233-2にサブクローニングした後に大腸菌K12-JM109に形質転換させた。この形質転換体を培養してペリプラスム画分ならびんサイトプラスム画分を調製して抗シスタチンS抗体を用いてシスタチンの発現を調べたところ、シスタチンが大腸菌のペリプラスムに分泌されていることがわかった。分子量は約14,400であった。なお、ペリプラスム画分にはフィシンの阻害活性が認められた。以上の知見はヒトの分泌タンパクのシグナル配列も大腸菌のタンパク質分泌系に有効であることを示唆している。
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