研究概要 |
動物のシステインプロテアーゼインヒビターはいわゆる「シスタチンスーパーファミリー」を形成している。これらのインヒビターは蛋白質代謝の制御を行うとともに細胞内外の不都合な蛋白質分解を阻止していると考えられている。 ヒトのシスタチンは「シスタチンスーパーファミリー」のファミリーIIに分類され、我々と外国の研究者によって5種類の分子類:シスタチンS,SA,SN,C,Dが明らかにされている。これらのインヒビターはヒトの第20染色体(p11.2)に局在するシスタチン多重遺伝子ファミリーによって発現制御される。我々と外国の研究者によって七つのシスタチン遺伝子座位;CST1(シスタチンSN遺伝子),CST2(シスタチンSA遺伝子),CST3(シスタチンC遺伝子),CST4(シスタチンS遺伝子),CST5(シスタチンD遺伝子),CSTP1(シスタチン偽遺伝子),CSTP2(シスタチン偽遺伝子)が明らかにされた。我々はシスタチンの機能を有効に利用するために、大腸菌系を用いたリコンビナント(組換え型)シスタチンの大量生産を試みた。その結果、組換え型シスチタンS,SNを大腸菌に生産させることができた。組換え型のシスタチンSはアミノ末端領域の配列がSer-Ser-Ser-Ser-Lys-Glu-Glu-Asn-Arg-Ile-Ile-であり、天然型のシスタチンSのそれと一致していた。組換え型のシスタチンSは天然型と同様に、パパイン、フィシン、カテプシンCを良く阻害(Ki=〜10^<-9>M)したが、カテプシンBを阻害しなかった。組換え型シスタチンSのカルボキシル末端側のArg残基(117位のアミノ酸)をTrp残基に変換しても、システインプロテアーゼ阻害に対する影響は認められなかった。今後、タンパク質工学的手法を用いて組換え型シスタチンの構造と機能の関係を探求する予定である。
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