研究概要 |
ラット顎下腺からの唾液と蛋白の分泌における神経伝達物質候補であるSubstance P (SP)と神経性ペプチドであるVascular Intestinal Peptide (VIP)およびその関連ペプチドのSecretin、gastric inhibitory peptide(GIP)の役割分担について検討した。結果:1.顎下腺唾液の分泌作用;(1)SP(0.1、0.3、1.0、3.0および10.0μg/kg)の1回静脈内投与では、唾液分泌は、0.1μg/kgでみられ、10μg/kgまで用量依存性に増大した。(2)SP(3μg/kg)とVIP(0.3、1.0、3.0および10μg/kg)の静脈内併用投与では、協力作用は、VIPの0.3μg/kgでみられ、3μg/kgまで用量依存の増大を示した。(3)3μg/kgのSPと3μg/kgのsecretinおよびGIPの静脈内併用投与では、協力作用がみられ、そのpotencyは、VIP>secretin>GIPの順であった。(4)VIP、secretinおよびGIPの3μg/kg、単独投与では、唾液の分泌はごくわずかであり、そのpotencyは、VPI>secretin>GIPの順であった。2.顎下腺分泌唾液の糖蛋白泳動像;SP単独投与、SPとVIP,secretinおよびGIPの併用投与による顎下腺分泌唾液の糖蛋白泳動像では、腺房由来の130KDa(顎下腺ムチン)と21.5KDaの糖蛋白が大部分で、その他に顆粒管由来の31KDa(カリクレイン)の糖蛋白がわずかに観察された。以上の結果より、ラット顎下腺の唾液と蛋白の分泌において、SPとVIPおよびその関連ペプチドのsecretin、GIPは、いずれも協力的に作用することが明らかとなった。今後は、顎下腺からの唾液と蛋白の分泌における(1)SPとVIPの関連ペプチドであるpeptide histidine isoleucine(PHI)、(2)SPとcalcitonine gen-related peptide(CGRP)、(3) acetylcholineとVIPおよびCGRP、(4)noradrenalineとVIPについて役割分担を明らかにする予定である。
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