ブタの基質形成期の幼若エナメル質において、その形成初期の基質には存在しなくて、石灰化が進むと、合成ヒドロキシアパタイトに強い親和性があり、また、その結晶成長を阻害する性質を持つ32kDa非アメロゲニンタンパクが存在する様になるが、このタンパクのN末特異的ウサギ抗体を作製し、免疫化学的方法でブタの幼若エナメル質の表層に存在するタンパクを調べると、89kDaエナメリンに反応し、さらに、140kDaのタンパクにも反応することがわかったので、この89kDaエナメリンが32kDa非アメロゲニンタンパクの前駆体であること、140kDaのタンパクもエナメリンであることを調べることを目的として、89kDaエナメリンのN末端側ペプチド(MPMQMPRMPGFSPKREPM)を合成し、このペプチドに対するウサギ抗体を作製した。また32kDa非アメロゲニンタンパクのN末端側ペプチドに対するモルモット抗体も作製した。これらの抗体を使用して、ブタ幼若エナメル質の表層からエナメリン画分を分画し、さらにそのうちの高分子タンパク画分をゲル濾過、イオン交換クロマト等で分離し、これらの画分について免疫電気泳動法で調べ、さらに精製した89kDaエナメリンを使用したサンドイッチ法に依る免疫化学反応を行なった。その結果、140kDaのタンパクが89kDaエナメリンおよび32kDa非アメロゲニンタンパクの前駆体であることが確認され、これらはエナメリンに分類されることがわかった。しかしながら、89kDaエナメリンのN末特異的抗体には反応するが、32kDa非アメロゲニンタンパクのN末特異的抗体には反応しない上記とは違った140kDa附近のタンパクも依存する可能性が示唆された。今後、エナメリンの一番分子量の大きい140kDaのタンパクを研究するためには、このタンパクが量的に少なく、これまでの方法では限界があるので、今後は分子生物学的方法で研究を進めることを考えている。
|