歯髄鎮痛薬として歯科保存領域で多用されるフェノール系薬剤の、歯髄における作用機作を、歯髄繊維芽細胞の増殖作用及びサブスタンスPとの関わりで検討を行った。まず、フェノール系薬剤によるサブスタンスPの遊離促進作用を調べた。 1.余備実験として、サブスタンスPの豊富なラットの脊髄約200mgの細切した組織を潅流チャンバーにいれて、ユージノール、グアヤコール、フェノールをそれぞれ最終濃度が0.005%となるようにクレブス液とともに潅流した。対照として、サブスタンスPの遊離枯渇薬であるカプサイシンを用いた。その結果、ユージノール、グアヤコールには、カプサイシン同様の有意なサブスタンスP遊離促進作用があることが分かったので、次の実験を行った。ラット下顎切歯歯髄を3匹分6本取り出し、細切した後潅流チャンバーに入れて、ユージノール、グアヤコールを上記の様に潅流し、各薬物について3-4例ずつ、その都度新たに歯髄を取り出して実験を繰り返した。その結果、両方の薬物には、歯髄細胞に対しても、クレブス液のみ流したものと比較してそれぞれ168%、155%と、有意なサブスタンスP遊離促進作用があることが分かった。 2.ラット切歯歯髄を取り出し、クリーンベンチ(科研設備備品費にて購入)内で無菌的に細切し、コラゲネース等を用いて細胞を定法に従って採取した。継代培養後、薬物による細胞増殖促進効果を観察する基礎的実験を行った。McCaffreyらの方法を用いて、96ウェルマイクロプレート上で増殖させた細胞のDNAを蛍光染色して、自動蛍光測定装置で測定を行った。現在の所、ユージノールでは10^<-8>-10^<-7>Mで僅かに細胞数の増加が見られ、グアヤコールの10^<-8>-10^<-5>Mでも増加が観察された。また、サブスタンスPの10^<-8>-10^<-6>Mで、細胞数が増加した。目下、継続実験中である。
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