歯科保存領域で多用されるフェノール及びその誘導体の歯髄における作用機作を、歯髄線維芽細胞の増殖作用及びサブスタンスPとの関連で検討を行なった。ラット下顎切歯歯髄を取り出し、クリーンベンチ内(前年度科研設備備品にて購入)で、定法に従って線維芽細胞を採取した。継代培養後、2-5×10^4個セルの細胞を24穴の培養プレートに移植した。3-4日後、ほぼconfluentになった状態で無血清培地に置き換えて休止期の細胞を作製した。24hr後、各種濃度の薬物及びサブスタンスPを加えてさらに24hr培養を続け、測定の1hr前に0.5muCiの^3H-Thimidineを加えた。細胞内に取り込まれた^3-ThimidineをDNA合成(細胞増殖)の指標として計測を行なった。また、血球計算盤による細胞数の計測も行なった。 サブスタンスPの10^<-9>-10^<-6>g/mlで^3H-Thimidineの取り込みが増加し、また細胞数の増加も観察された。ユージノールの10^<-12>-10^<-10>g/mlで^3H-Hhimidineの取り込みが増加し、また細胞数の増加も観察されたが、それ以上の濃度では増殖が阻害された。グアヤコールの10^<-8>-10^<-6>g/mlでも同様の増殖が見られた。ユージノール及びグアヤコールは、ともに同程度の歯髄からのサブスタンスP遊離促進作用を持つことを既に観察しており、これらの薬物には、直接的な増殖作用と共にサブスタンスP遊離も起こして組織の賦活化に関与していることが示唆された。
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