研究概要 |
歯周組織の再生を目標とした治療のなかでも,歯槽骨欠損を回復する治療法は,従来から様々な方法が用いられてきた.その中でも,近年,人工骨補填材を使用する方法が研究され,治療に用いられるようになってきた.特に生体親和性が高く,周囲歯槽骨からの骨伝導能を有するハイドロキシアパタイト(HA)と,生体内での吸収性を有するβ-リン酸三カルシウム(β-TCP)との複合材料である二相性リン酸カルシウム系人工骨補填材(BCP)顆粒の吸収および骨への置換程度ならびに状態やサル歯槽骨欠損部に充填した場合に歯周組織の治癒,再生にどのような影響を及ぼすかを組織学的に検索した. Wistar系雄性ラット60匹の頭蓋骨に骨欠損を作成した後,実験群では二相性リン酸カルシウム系骨補填材(BCP)顆粒を充填し,対照群では顆粒を充填せず縫合した.観察期間は術後1,2,4,8,16週とし,顆粒自体の新生骨置換機序について組織学的に検索した.術後1週例では,顆粒表面周囲に多核の巨細胞が多数観察される領域が見られ,その周囲には結晶を貧食した多数のマクロファージが観察された.その後,多核の巨細胞の数は減少し,顆粒内部に観察される細胞の数が増殖する傾向が観察された.週例を追うに従い顆粒の崩壊は内部に及び,分割された顆粒間に,細網細胞様細胞や毛細血管に富む組織が侵入している像が多数観察された.また,顆粒の崩壊とマクロファージによる結晶の貧食は血液供給が良好な部位から始まる傾向が見られた.実験群,対照群ともに,新生骨の形成は既存骨断端付近から起こり,一部に既存骨と連絡せずに骨膜付近から形成されたと思われる新生骨も観察された.
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